「勉強のやり方が、分かっていないんだと思います。」
お子様の勉強に問題を感じられるとき、そのようにおっしゃる親御様がとても多いです。そして、正しいやり方を教えることで問題は解消できるとお考えです。
ところが、やり方を教えても勉強の問題は解消しないことがほとんどです。いくらやり方を教えても、多くの子どもたちがやり方を変えようとはしないからです。試しに勉強法の本を与えてみてください。ほとんど関心を示さないか、関心は示したとしてもやり方を変えようとはしないと思います。一時的に変えても、「自分には合わない」などと言って、すぐに戻してしまうことも多いです。
変えようとしないのは、なぜでしょうか?
一つの理由は、自分で見つけたいからです。この場合、お子様は教えてもらうことを求めていません。自分で探索して、自分で見つけたいのです。納得の行くまで自分のやり方を試し、自分で考えて改善していきたいのです。自分で見つけたいのですから、教えてもやり方を変えようとはしません。
やり方を変えないばかりか、教えることでむしろマイナスの効果が生じてしまうこともあります。それは、求められてもいないのに教えることで、暗にメッセージを送ってしまうからです。「あなたの間違ったやり方を、改めなさい。」そんなメッセージを送ってしまうのです。その結果、「うるさい!」と反発を招いたり、信頼関係を傷つけてしまったりするかもしれません。また、自分を信じて行動する勇気をくじいてしまうかもしれません。
お子様の探索がうまくいくよう願うのであれば、辛抱強く待つことが重要です。「何か手伝えることがあれば、いつでも言ってね。」そう伝え、温かく見守るのです。助けを求められてもうまくアドバイスできないと思われるのでしたら、お子様の手に届くところに勉強法の本をさりげなく置いてみるとか、お子様の探索を支援してくれる塾に相談してみるのも一つの方法だと思います。
やり方を変えようとしないもう一つの理由は、動機づけが良くないからです。動機づけとは、行動を引き起こす心の働きです。この心の働きによって、人は様々な行動を起こしたり、続けたりします。お子様の勉強に問題があるとき、その勉強を引き起こしているのは、多くの場合、統制的な動機づけです。これは、しなければならないという外部からの圧力や義務感から行動を引き起こす動機づけです。
やり方を変えようとしないのは、お子様の勉強がそんな動機づけによって引き起こされたものだからです。本当はしたくないし、するべきだとも思わない。それでもしなければならないから、仕方なくする。そんな勉強を、やり方を変えてまでより良くしようと思わないのは、人としてとても自然なことだと思います。
このような時にやってしまいがちなのが、圧力をかけてやり方を変えさせようとすることです。そのようにしたところで、心から変えようとすることはまずありません。口うるさく言われるのが嫌だからと、表面的に従っているように見せかけることもありますし、頑なに反抗することもあります。なんとかしてやり方を変えさせることができたとしても、動機づけはさらに悪化してしまい、勉強をより嫌がるようになる危険性もあります。
お子様が意思を持って改善に踏み出すことをお望みならば、動機づけの改善に取り組まれることをお勧めします。そのためには、お子様の自律性を支援する必要があります。それは、とても難しいことですし、時に大きな忍耐が要求されることでもあります。ただし、親御様がそれを受け入れ実践されたならば、お子様の動機づけは徐々に改善していきます。そうするうちに行動は変わっていくでしょう。勉強のやり方を自ら考えていろいろ試したり、改善のための援助を自ら求めたりするようになります。
以上が、教えてもやり方を変えようとしない二つの理由です。現状満足している場合など、他にも理由はあると思いますが、よくある二つの理由に絞って説明しました。ちなみに、この二つの理由のうち、該当することが多いのは後者です。そして、最初は後者の理由に該当する生徒であっても、動機づけが改善するにつれて、前者の理由が該当するように変わっていきます。
教えてもやり方を変えない生徒ばかりではありません。教えることで勉強のやり方をどんどん変えて改善していく生徒たちもいます。彼らの改善行動には、ある共通点があります。それは、彼ら自身の意思から生じたということです。彼らがやり方を変えるのは、教えてもらったからではありません。彼ら自身が主体となって改善を目指すからこそ、変えるのです。そんな彼らの行動は、良好な動機づけに支えられています。