成績向上のためには勉強の質を上げ、量を増やすことが大切だとよく言われます。このように成績向上には2つのポイントがあるにも関わらず、お子様の成績が低迷する保護者様の多くが量を増やすことばかりに着目されます。そして、それを強要するために怒ったり、中には制裁まで与える方もいらっしゃいます。確かにそれで、一時的に量を増やすことはできるのかもしれません。しかし、質の面ではむしろ悪影響を及ぼすように思います。そして、結果的に質の低い勉強を続けることとなり、成績向上にはなかなか近づかないでしょう。
成績が振るわない生徒は、ほぼ例外なく質の低い勉強をしています。質の低い勉強の中でも特に致命的だと感じるのが、知識を繋げず単発で覚えようとする勉強です。ある生徒は、阪神工業地帯の「阪神」が大阪・神戸と繋がっていませんでした。また、ある生徒は、小学校で習った「半径×半径×3.14」と、中学校で習った「πr2」を別物だと捉えていました。別のある生徒は、高い所から低い所へものが転がることは分かるのに、気圧の高いところから低いところへ風が吹くことを新たに覚えようとしました。
繋げない勉強の質が低いのは、すでに知っている知識を活かさないからです。すでに知っている知識を活かさないということは、新しく学ぶことを0から覚えるということです。そうすると覚えるのが大変ですし、せっかく覚えたことも忘れやすいでしょう。また、すでに知っている知識も広がりませんし、深まりません。つまり、そのような勉強は、労力がかかる割に得られるものが小さいのです。
ではなぜ彼らは繋げようとしないのでしょうか?理由の一つは「知らないから」です。繋ぐことでより深く分かること、覚えるのが楽になることを知らないのです。そのことにまだ気づいていないのです。学校では勉強の内容は教わっても、仕方までは教わりません。ですから、気づいていなければ知りませんし、知らないことは仕方のないことです。
このようなお子様に対して怒ることに何の意味があるのでしょうか。怒ったところで、知らなかったことに気づくはずがありません。そもそも知らないことは責められることではないはずです。必要なことは、体感させてあげることだと思います。繋げることで知識が深まることを体感させてあげるのです。本当に体感したならば、次は自分でやってみようと、進んで頭を働かせ始めるでしょう。ですから、このようなお子様に対して怒ることは、無意味だと思います。
知識を繋げようとしないもう一つの理由は「改善しようと思っていないから」です。深く分かることや覚えやすくなることを、求めていないのです。そもそも、勉強の質を上げようなどと思ってもいないのです。勉強することに納得しておらず、いかに目の前の面倒から逃れるかのみを考えているのです。
では、このようなお子様に対して怒るとどうなるでしょうか。怒ったところで勉強に対する納得感は生じるはずもありません。むしろ、より理不尽な思いを強くするでしょう。そうすると、ますます頭を使わずに逃れようとします。ですから、このようなお子様に対して怒ることは、成績向上を遠のけることになると思います。
以上が、怒ることが成績向上に寄与しないと考える理由です。実際、怒られることを避けるために嫌々勉強に取り組む生徒はいても、勉強法を改善しようとまで考える生徒は見たことがありません。また、大きく成績を上げる生徒は、怒られることで動かされているのではなく、自らの意思で動いています。
こんなことを書いてはいますが、何を隠そう私にも怒って無理やりさせようとしてしまった経験があります。勉強したくない生徒・テストで悪い点をとってしまった生徒の気持ちを理解しようともせずに、ただただ勉強することを強要しようとしてしまいました。きっと、生徒を一人の人間として尊重していなかったのだと思います。そして、自分の考えを押し付けようとしていたのだと思います。
怒ることを完全に捨てた今、自分の過ちを本当に恥ずかしく思います。未熟だった私に怒られた生徒には、本当に申し訳ないことをしてしまったと深く反省しています。そして、私に気づきを与えてくれた彼らには、心から感謝しています。