第1志望校の合格をしっかりと掴んだKくん。彼の受験にはもともとあまり不安を感じていませんでしたが、入試直前の追い込みでさらに70点ほど上積みできるようになったため、合格を確信していました。
そんな彼の学習は、まさに心からのものでした。「今日、塾で何を身につけるのか?」彼はいつもしっかりと考えていました。また、授業中に何かを教わった後には、それが本当に分かったのかを自ら確かめようとしました。もう少し練習したいと感じたときには、自分で見本教材から類題を探して練習することもありました。さらに、講師のアドバイスを懸命に自分のものにしようとしましたし、必要だと感じたときにはいつも自分から助けを求めました。
彼がこのような心からの学習に取り組んだのはなぜでしょうか。それは、彼の動機づけが自律的なものだったからです。自律的な動機づけが高い生徒は、まず間違いなく心から学ぼうとします。彼らにとって学習の目的は「身につけること」であり、そのためにあらゆる手段をとろうとするのです。
では、彼の自律的な動機づけが育まれたのはなぜでしょうか。その一番の要因は、ご家庭での自律性の支援が十分であったことだと思います。「勉強はしておいたほうがいいぞ〜」お父様はいつもお声がけされてはいたようですが、彼の成績について評価・批判したり、もっと勉強するようプレッシャーをかけたりするようなことはされませんでした。
先日はこんなお話も伺いました。あることで、Kくんがあまり好ましくない行動をとってしまったそうです。お父様がそのことについてのお考えを伝えると、Kくんは「分かってるけど、できひんねん。」と答えたそうです。そんなKくんに、こうお声がけされたそうです。「今は子どもやから、ええねん。」
お父様は、うまくできないKくんを矯正しようとするのではなく、そのまま受け止められたのです。お子さまを操作する対象とみなすのではなく、意思ある一人の人間として敬意を持って接しておられるように感じました。当塾に通ったKくんの二人のきょうだいも、やはり同じように自律的だったのは、お父様が普段からそんなふうに接してこられたからに違いありません。
では、お父様がそのように接してこられたのはなぜでしょうか。その理由の一つは、とても長い視点を持っておられるからだと思います。「この子たちが、30、40、50になって、私が死ぬときに豊かであればいいと思っている。今この瞬間だけを見てどうこう言うのは違うと思う。」お子さまの教育について、そのようにおっしゃいました。
そしてもう一つの理由は、お子さまを強く信頼しておられるからなのだと思います。「自分の人生に必要なものをしっかり見極め、きちんと身につけることができる。」お父様からは、お子さまに対するそんな強い信頼をいつも感じました。お父様がお子さまを信頼されているからか、お子さまもまたお父様を信頼していました。
Kくんのご家族全体が、強い信頼の絆で結ばれているのを感じました。